介護業界で働く人も必見 介護ロボットをもっと知りたい!
少子高齢化が進行する中で、介護を必要とする人口が増える一方、労働者人口が減少し、介護の担い手不足が深刻化しています。そんな中、注目されているのはDX化です。
経済産業省は、2022年4月に公開した「産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について」の中で「あらゆる産業において、各企業は競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められています。」と述べています。介護業界でも、この波を受けさまざまな分野で最新のデジタル技術を導入する取り組みが始まっています。
そこで今回ご紹介するのは、最新の見守り介護ロボット「Neos+Care(ネオスケア)」です。実際に、介護現場に足を運び、働く人からの声を聞いているというN&Fテクノサービス株式会社の高橋喜昭さんから、開発と導入の裏側を伺って来ました。これから介護職を目指す人も気になる、「介護×DX化」に注目してみましょう!
N&Fテクノサービス株式会社の事業内容を教えてください
N&Fテクノサービス株式会社はノーリツプレシジョンと富士フイルムの2社を親会社としてスタートした会社です。この2つの会社は業務用の写真製造機を作っているメーカーですが、N&Fテクノサービス株式会社は2社のサポート部門を統合してできた会社となっています。2021年10月より富士フイルムの100%子会社となりました。
事業内容は業務用写真製造機のメンテナンスサポートや医療機器のメンテナンスです。2018年からNeos+Careの販売に携わるようになりました。
また、介護機器は当初Neos+careだけでしたが、介護施設への訪問活動をしていく中で、各施設にはさまざまな困りごとがあるということに気がつきました。そこで、現在では施設に情報の聞き取りを行い、見守り機器を中心に異常への対策や業務効率化などのトータルの提案をしています。その他にも、施設への情報提供として毎月Webセミナーの開催や、地区限定でミニ展示会などを主催しています。
Neos+Care本体イメージ
Neos+Careはプライバシーを守りながら居室を「見える化」する仕組み
Neos+Careの特長の1つ目は、プライバシーを守りながら居室を「見える化」できる点です。
従来の見守りカメラとは異なり、単なる監視カメラではないため、居室での着替えやおむつ替えなど誰にも見られたくない姿は見えません。プライバシーを守ったシルエット画像になっているため利用者の方にも家族の方にも安心してもらえるような機能を持っています。また、居室の様子は職員のスマートフォンからも確認することができるため、無駄な見守りが不要になり、人手不足が慢性化している介護の現場で業務負担の軽減にもつながります。
正確な情報と、事故の再発防止への取り組みにつながる仕組み
2つ目の特長が、誤検出が非常に少なく早く正確な数値と、録画機能による再発防止です。
Neos+Careで取り入れられている独自のアルゴリズムは、人を人として検出することができます。これにより、危険性がないかどうかを判断することができる仕組みになっています。そのため、誤検出が少なくなっているのです。また、万が一転倒事故が起きた際にはその前後の動きを録画しておくことができるため、なぜ転倒に至ったかの状況を後から調査することができるのです。
緊急訪室・転倒事故の半減にもつながる仕組み
3つ目の特長が緊急訪室(緊急駆けつけ)、また転倒事故が半減するということです。
例えば「利用者が起き上がった」ときに、何も異常が無ければお知らせ機能は届きません。また、転倒事故が起きたときの動作を調査することができるので、再発防止の効果が期待できます。それにより、Neos+Careには、利用者の安全を守るだけでなく、職員の方の肉体的・精神的負担を大きく減らすことができるところが1番のメリットです。
具体的には、何度も部屋に訪問する必要がなくなったり、何らかの事故が起きていないかを事前に把握することができたりするという点で、部屋へ向かう職員の負担の軽減につながります。
介護業界でロボットや見守りシステムなどのIT技術を用いようと思った理由を教えてください
製造メーカーであるノーリツプレシジョン社からの聞き取りによれば、ノーリツプレシジョン社は富士フイルムと並んで写真業界を牽引しており、長年培ってきた画像処理技術を持ち合わせています。その技術を駆使し、例えば、写っている画像を判断するだけでなく、必要な箇所を浮き出したり、人物を特定して綺麗に仕上げたりすることができます。他社が真似できない高速画像処理技術というものがあり、その技術を使って、医療や介護、福祉における人材不足に貢献したいという思いから介護業界に進出しました。
Neos+Careを導入した居室のイメージ
Neos+Careを開発する過程で試行錯誤したエピソードを教えてください
健常者の方と高齢者の方では微小動作1つをとっても、体の使い方が全く違う点で苦労しました。当初、健常者のデータを基に作成した動作の検出アルゴリズムを作り込むときに、健常者のデータをもとに作ったものでは、高齢者の特徴的な動作を捉えることができなかったのです。例えば、健常者にとってはなんら難しい動作ではない「起き上がる」という動作も、高齢になると筋肉の力が衰え、さまざまなパターンで複雑な動きをしながら起き上がる点があります。そのあたりを解決するために、介護士さんの協力を得て、数多くの高齢者の動作のデータを蓄積することにより、アルゴリズムに組み込んで、高い検出力を実現することができたのです。
実際にNeosCareを使用している方からの反応を教えてください
特定の利用者がだいたい何時頃にどんな動きをするなどの、行動パターンがわかってきて、それによって「ケアをしやすくなった」という声を聞くことがありました。
初めは転倒事故を防止したいという思いで導入される施設がほとんどなのですが、それ以外にも「利用者の活動パターンを知ることで他のケアにも役立てることができる」という声があったそうです。
具体的には排泄介助で、夜中にトイレへ行くパターンを把握することができます。Neos+Careによって、ケアプランの見直しに活用できたという施設もあります。
また、「業務効率の改善にもつながった」という声もありました。例えば転倒事故が起きた際に、これまで職員が見ていない間の出来事は想像で書くしかなかった事故報告書の作成も、Neos+Careの導入により早く・簡単になったという意見もあったそうです。他にも、そもそも転倒事故が軽減したために、事故報告書作成の手間が減り、業務効率の改善になったそうです。
介護職員の今後の展望を教えてください
介護業界は今後、人材不足が懸念されています。その対策として、ICT(※情報通信技術のこと)や、IoT(※スマホやタブレットなど情報通信端末のこと)の機器を導入することが必要です。それらをうまく活用することによって、介護職員の活動可能な範囲を広げるとともに、利用者へのケアの品質を上げ向上させると、2つのことを向上させていくことができます。介護ロボットをうまく活用することによって、プラスのイメージを持ってもらえる「新3K」へと変化していくと思っています。「新3K」は、職場環境によって異なりますが、まず「クリエイティブな仕事」。次に「綺麗な仕事」「感謝される仕事」です。介護の仕事に良いイメージを持ってもらえるようになると、これから就職したい・働きたいという声や、実際に現場で働きがいのある職場に変化していくと思っています。
介護職を目指す学生へ向けてエールを送ってください
介護ロボットは職員が楽をするためだけにあるのではないといえます。
介護ロボットは、介護職員の能力を拡張して、より良いケアを行うために活用していくものです。機械はただの道具ですから、うまく使わないと全く効果が出てこないです。
それをうまく使いこなすことによって、より良いケアを利用者に提供できるようになるような形になっていけば良いなと思っています。これから介護を目指す学生さんたちにも、そうした環境が整っている施設に就職できれば良いと思います。介護施設は基本的な介護保険で成り立っているのであまり違いはないと思います。
同じような施設体系の中ではやはり環境の良いところで働きたいというのは1番だと思うのです。ぜひ、介護施設への就職を検討する際には自分の働きたい環境の施設を考えて、よく調べてみると良いですね。
【取材協力】
N&Fテクノサービス株式会社
介護営業部 部長 高橋喜昭 (たかはし のぶあき)
元々は業務用写真製造機のサービスマン
上海・北京駐在歴あり 現在は介護施設への見守りをキーとしたソリューション提案を展開
趣味:マラソン(フル~100km)、ラグビー観戦