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2022年5月18日

特別養護老人ホーム(特養)は、どんなところ?

主に自治体や社会福祉法人が運営する公的な施設です。寝たきりや重度の認知症など常に介護が必要な高齢者が生活します。民間の老人ホームなどと比べると、料金が低いことがいえますが、入居するためには要件が設定されていることから、入居希望者が待機している状況が問題化されていた時期もあります。ただ、現在は以前よりも入居しやすくなっています。今回は、そんな特別養護老人ホームでは、「どんなお仕事をするの?」「どんな人が利用しているの?」「どんな人たちと働くのか知りたい!」といった、具体的な疑問をズバッと解説!これを読めば、特別養護老人ホームがどんな介護施設なのかイメージが湧いてくるはずですよ。

働き方の特徴

寝たきりや重い認知症など介護が必要な利用者が多いため、身体介護がメインです。施設によって、多床室が多い従来型と、個室からなるユニット型があり、従来型とユニット型では介護の仕方が異なります。前者はフロアの人数が多いぶんさまざまなケースを体験でき、複数の職員で業務分担しながら1日のスケジュールに沿って介護をします。後者はユニットごとにリーダーが置かれ、個々に寄り添った介護ができます。地域に根ざした施設が多いことも特徴です。

どんな人が利用者なの?

特別養護老人ホームは、誰でも入所できるということではなく、要介護3以上の65歳以上の高齢者という条件があります。しかし、例外もあり要介護1〜2の方でも特例(条件に当てはまれば)として入所できる場合があります。特別養護老人ホームは、基本的に入りたくても入れないため2人に1人が空きを待っている状態です。

例えば要介護度3以上の人であれば、ほとんど全ての日常生活に介助が必要な人のイメージです。歩行を含め、食事を摂ることや、着替えも自力では難しい状態といえます。また、認知症が進行しているケースも多く見られ、さまざまな症状が表面化しているケースもあります。

仕事内容は?

介護職員の主な仕事内容は、食事介助、排泄介助、入浴介助、移動介助などの身体介護やリネン交換やレクリエーション活動などを行います。

・食事介助

利用者の状況によっては職員側で食事にとろみをつけるなど食事形態を調整して、嚥下事故が起きないように工夫します。

・排泄介助

排泄介助には、トイレ介助だけでなくポータブルトイレの介助やオムツの介助、便器や容器を使用する介助があります。

・入浴介助

身体を衛生的に保つために、入浴介助は大切です。また、リラックス効果や血液の流れを促すなど入浴の効果はさまざまあります。利用者に合った入浴方法を行います。

・移動介助

生活するうえで必要となる「起きる」「座る」「歩く」などの動きが困難な利用者のために、移動の際のサポートをします。

・レクリエーション

レクリエーションは、利用者の方が安全に、かつ楽しく入所施設で過ごすためにあります。

・夜間勤務

日中よりも少ない人員配置で良いという決まりになっています。夜間であっても利用者の介助が必要になるシーンもあるので大事な仕事です。

・看取り

無理な延命治療は行わず、利用者が自然に亡くなるまでを見守ります。

 

特養の1日の流れ

特別養護老人ホームでの介護職員は、日勤、早番、遅番、夜勤の4交代制のシフト制が多いです。

▼特養老人ホームの1日の流れ1例(4交代制の場合)

シフト制ということで休日のようなまとまった休みが取りづらいイメージがあると思いますが、シフトを上手く組み合わせることで旅行に行けたり、テーマパークや映画館など平日にしっかり時間を確保してプライベートが充実している介護職員もいます。

また、体力がある若いうちは夜勤をメインにシフトに入り夜勤手当などで給与を増やすこともできたり、家庭を持った時は日勤メインにして家族との時間を確保することができるなど、実はライフプランに合わせて働きやすいお仕事なのです。

どんな人たちが働いているの?

特別養護老人ホームは、入所している利用者に適切な介護サービスを提供している施設です。その施設の中には介護職員だけではなく医師や看護師など職種ごとに人員配置が国の基準として設けられています。自分自身が介護職員として働く際にどんな人たちと一緒に仕事をするのかどんな役割で働いているのか見てみましょう。

医師

利用者の健康管理や必要な診察を行います。場合によっては医療機関への受診や専門的な機関での検査を指示する場合もあります。

生活相談員

利用者の相談援助だけでなく、利用者家族への相談援助を行います。専門資格が必要になります。

看護師

利用者の健康管理を行います。体温、血圧、脈拍などの毎日の健康管理のほか、医療処置・服薬の管理などを任されます。

介護職員

利用者の日常生活全般の介助を行います。直接的な介助以外にも、観察記録や掃除・洗濯などの日常的な生活で発生する業務を任されます。

栄養士

利用者の食事や栄養面での管理を行います。利用者それぞれの体調に合わせた献立作りを任されます。

機能訓練指導員

利用者の身体や、生活機能の向上を目的とした運動指導などを行います。

介護支援専門員(ケアマネジャー)

利用者に提供する介護サービス(ケアプラン)の作成・管理を行います。

事務員(介護事務)

無資格でも働くことができます。主に、金銭の管理などの支払い・請求業務や窓口の対応・来客時の応対などが任されます。

どんな人に向いている?

●時間の流れを意識して介護をしたい人(従来型)

利用者が施設内で生活を送る場所を提供するため、特別養護老人ホームで働く職員は時間の流れを意識して断続的な仕事をすることができます。慣れない内はなかなか馴染めなかった利用者の笑顔を少しずつ垣間見ることが出来たり、自分のライフスタイルに合わせたシフトを組むことでプライベートを充実させながら働くことが出来ますよ。

●みんなと協力しながら介護をしたい人(従来型)

従来型の特別養護老人ホームでは、施設を長く運営しているところが多いため、独自のノウハウを持っていることがあります。

例えば、初めての介護職で不安を持っていても、長年そこで働いてきた職員から知識と技術を教えてもらえるため、みんなで協力しながら働くことが出来ます。特に、従来型の場合は夜間の職員配置が手薄になるシーンでも、複数人で対応する場合が多いなど介護に慣れていなくても安心して働けるメリットがあります。

●一人ひとりに寄り添った介護をしたい人(ユニット型)

ユニット型は、少人数の介護職員対1人の利用者を任される場面が多いため、利用者さんとの距離が近く、じっくりと人間関係を構築することが出来ます。日常的に雑談をする機会もあるため、利用者さんとの関係性も深まりますね。

●リーダーを目指したい人(従来型・ユニット型)

従来型・ユニット型を通して施設内の職員同士で情報共有をしあいます。利用者がいかに過ごしやすい環境づくりを提供するかを念頭に置き、施設全体を俯瞰して見ることでリーダーとしての素質が培われていきます。細かい情報取集から、ミス・トラブルが発生した際の対処法など、リーダーとしてスキルアップしていく可能性は十分にありますよ。

●経験を積みながらしっかり稼ぎたい人

金銭的な側面でいうと、夜勤の出来る介護職はしっかりと稼ぐことの出来るお仕事といえます。例えば、2019年の介護施設夜勤実態調査によると、夜勤1回あたりの額は約3,000~8,000円でした。つまり、月に5回夜勤を担当すれば月に15,000円〜40,000円も稼ぐことが出来るのです。夜勤のある介護職ならではのメリットといえますね。

●介護の幅広い分野を学びたい人

特別養護老人ホームでは多くの職種の人と働くことができます。介護のことだけではなくさまざまな職種の人がいるからこそ幅広く知ることができる学べる環境です。視野を広くして物事をとらえ、いろんな人とコミュニケーションをとる必要があります。